Theory

理論と計算方法

性癖診断の理論とは、ふつうの性格の質問への答えから傾きを推定し、それを性癖の軸に読み替えて、タイプ・境界・ギャップ・希少度を出す計算の仕組みです。計算の部分はまじめに、読み替えの部分は遊びとして作っています。性癖診断が何を計算していて、何はしていないのか。数式をなるべく使わずに説明します。

タイプではなく、連続した座標で測る

よく知られた性格タイプ診断の多くは、人を「どちらか」に振り分けます。けれど実際に性格の得点を集めると、ほとんどの軸で真ん中あたりに人が多く集まる、なだらかな山の形になります。白か黒かで切ると、境目のすぐ両側にいる、ほとんど同じ人たちが別のタイプにされてしまいます。

そこでこの診断は、まず軸ごとの位置を連続した値(座標)として推定し、そのあとで分かりやすさのためにタイプへ落とし込みます。タイプは入口で、本体は座標です。

「境界」という結果

軸ごとに、どちらの極に寄っているかの確からしさ(傾き)を計算します。傾きが 75% に届かない軸は無理に決めず、結果のコードでも文字の代わりに「・」を置いて「境界」と表示します。

境界の人がたくさんいるのは自然なことです。山の形の分布では真ん中付近に人が多いからです。境界の軸は、場面によってどちらの面も出しやすい、幅のある軸だと考えることもできます。

5つの軸と、外の顔・内の顔の二層

  • A1 S/M:攻め(S) ⇔ 受け(M)
  • A2 燃えどころ:妄想 ⇔ 体感
  • A3 温度:甘々 ⇔ 冷徹
  • A4 ペース:調教 ⇔ 衝動
  • A5 理性のブレーキ:暴走 ⇔ 理性(内の顔だけで測る)

質問はどれも、外で充電するか内で充電するか、抽象で考えるか具体で考えるか、気持ちを重んじるか筋を重んじるか、計画するか即興で動くか、気持ちが揺れやすいか――というふつうの性格の質問です。その傾きを、S/M・燃えどころ・温度・ペース・理性のブレーキに読み替えています。読み替えは「場を回す人は主導権を握りがち」といった連想にもとづくエンタメで、性格と性的嗜好の関係を研究で確かめたものではありません。

4つの軸は外の顔(人から見えるプレイスタイル)と内の顔(ひとりで妄想するときに感じている欲)の両方で測り、5つめの理性のブレーキだけは内の顔の質問でのみ測ります。外の顔と内の顔を同じ軸の上に置くので、どの軸でどれだけずれるのかを直接比べられます。

ふたつの顔は、質問の視点で分けています。外の顔の質問は「初対面の人が多い場では、自分から話題を振ることが多い」「予定は前もって人に共有しておく」のように、人といる場面でのふるまいや周りからの見られ方をたずねます。内の顔の質問は「誰かの頼みを断ったあと、しばらく気になってしまう」「予定のない休日は、そのときの気分で動きたい」のように、あとから残る気持ちや、ひとりのときの感じ方・考えごとをたずねます。

受験の画面では、この2種類を決まった間隔で1本の流れにまぜて出し、どちらの質問かは表示しません(かんたん診断なら外の顔12問・内の顔8問の計20問)。「裏の自分は?」と身構えて答えると、理想や思い込みが入りやすくなるためです。ふつうに答えてもらった回答を、項目ごとに外の顔・内の顔に振り分けて推定し、結果のページで初めてふたつに分けて見せます。

「表に出ない、もうひとつの自分」という発想は、心理学者ユングの「影」の考え方を思わせるものです。ただし、この診断はその理論をそのまま採用しているわけではなく、あくまで同じ質問形式で二つの場面を測り比べています。

質問が人によって変わる理由:適応型テスト

答えから座標を推定するのに、項目反応理論(IRT)の「段階反応モデル」を使っています。7段階の答えそれぞれが、座標のどのあたりの人から出やすいかを質問ごとにモデル化し、ベイズ推定で「いちばんありそうな位置」と、その推定の誤差を計算します。

次の質問は、いまの推定に対していちばん多くの情報をくれるものを選びます。軸ごとに誤差が 0.35 を下回るか 10 問に達したところでその軸を終えるので(最低 6 問)、外の顔の問題数は 24〜40 問の間で人によって変わります。内の顔は全員共通の 20 問です。

同じ答え方をすれば同じ質問・同じ結果になるよう、出題の順番も含めて計算は決まった手順で行い、参照用の別実装との一致をテストで確かめています。

外の顔と内の顔のずれの判定

軸ごとに、外の顔と内の顔で向き(どちらの極か)が入れ替わっている確率を計算します。向きが逆で、その確率が 75% 以上なら「反転」。向きは同じでも、位置が 1 以上動き、測定の誤差を考えても偶然とは言いにくければ「揺らぎ」とします。

この組み合わせから、ずれ方を11のパターンに分けます。1つの軸だけが反転する8種類、2つ以上の軸が反転する型、揺らぎだけの型、そしてほとんど変わらない一貫型です。

希少度の数学:ほぼ全員がどこかで少数派

あなたの座標が、人々の分布の中心からどのくらい離れているかを、軸どうしの相関も考えに入れた距離(マハラノビス距離)で測ります。4つの軸を使うとき、この距離の2乗は自由度4のカイ二乗分布に従うので、「自分より中心から遠い人が何%いるか」を計算できます。

高い次元には、直感に反する性質があります。中心のごく近く(距離 0.5 未満)にいる人は、全体の約 0.7% しかいません。軸どうしが独立だとすると、各軸で「真ん中の半分」に入る確率は 50% でも、4軸すべてで真ん中に入る人は 0.5 の4乗で約 6%。残りの約 94% は、少なくともどれかの軸で少数派の側にいます。「全部の軸で平均的な人」は、むしろ珍しい存在なのです。

この性質を、数字を作らずにそのまま見せるのが、性癖診断の希少度です。実測のデータが十分に集まるまで(目安 1,000 件)は、平均0・ばらつき1の理論上の分布を基準にした値を出し、理論値であることと基準の件数を添えます。

構成比と近似タイプ

境界に近い軸がある人は、ひとつのタイプだけでは描ききれません。そこで、各軸の傾きの確からしさを掛け合わせて16タイプそれぞれの構成比を計算し、2番目・3番目に大きいタイプを「近似タイプ」として、その面が出やすい場面とあわせて示します。

構成比が 5% に満たないタイプは表示しません。わずかな可能性まで並べると、かえって自分の姿がぼやけるからです。

よくある批判と、設計上の答え

  • 「二択に分けるが、実際の得点は真ん中に多い」→ 連続した値で測り、どちらとも言えない軸は「境界」と表示します。
  • 「受け直すとタイプが変わる人が多い」→ 推定の誤差と傾きを示し、揺れやすい軸を隠しません。
  • 「気持ちの揺れやすさを測っていない」→ 気持ちの揺れやすさをもとにした理性のブレーキの軸を設け、内の顔の質問で測ります。
  • 「誰にでも当てはまる文章が並ぶ」→ 解説文は軸の値に結びついた文章ブロックから組み立て、境界に近い軸は控えめな言い回しにします。
  • 「相性に根拠がない」→ 関係がうまくいくかどうかは予測せず、2人の座標の関係だけを示します。

限界と、使い方の注意

  • 18歳以上の大人向けのエンタメです。性格の傾向を性癖に読み替えた遊びで、医学的・心理学的な診断ではありません。
  • 結果は「こういう遊びが合うかも」という読みものです。実際のプレイは、いつでも大人どうしの合意のうえで。セーフワードとアフターケアもお忘れなく。
  • いまの質問の識別力と閾値は、較正前の初期値です。公開後に集まった回答で較正し、精度を上げていきます。
  • 答えは自己申告です。その日の気分や、どう見られたいかによっても結果は変わります。
  • 日本語版・英語版それぞれの妥当性は、まだ検証している途中です。
  • 質問が測る軸は、心理学で広く使われる Big Five(5因子モデル)を土台にした独自のものです。それを性癖に結びつけているのはこの診断の遊びです。MBTI とは別物で、その公式な検査や類型とは関係ありません。
  • 採用選考や人事評価など、人を選別する目的には使わないでください。

質問の出典

質問は、IPIP(International Personality Item Pool)の公開項目(パブリックドメイン)をもとに、日本語として自然に答えられるよう書き直したものです。どの項目をもとにしたかは、質問ごとに記録しています。

受けた人全体の分布は「観測所」で公開しています →

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